2010年07月08日
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ゆうパック遅配問題をISOの立場から考える
今年7月6日、突然、ゆうパック遅配35万個に、大手スーパーの中には「他社に切り替え検討」と報道された。日本郵政グループの郵便事業会社は、今月1日から、日本通運との共同出資会社で運営していた「ペリカン便」と配送業務を一体化した影響とのことである。この結果荷物の取扱数が急増して作業が滞り、混乱が生じたと報じられている。
直接の顧客「ダイエー」「アマゾンジャパン」などが、生鮮品の再配達、他の宅配業者への変更などの緊急の対策がとられている。
昨年10月に予定していた事業統合が今年7月まで延期された後のこの混乱である。
その後7日、8日の新聞では、「郵便局職員に危機感感じられず」「遅配の全容が把握できない」「原口総務相が準備不足を指摘」「総務省が実態を調査、処分も検討」などが報じられている。
この混乱をISOの要求事項を参考にして問題点を探ってみたいと思う。
「機器の操作に不慣れで滞留が起こったと説明されている。」
ISO9001品質マネジメントシステムの要求事項では、6.2.2節「力量、教育・訓練及び認識」に下記のように要求している。
「組織は、次の事項を実施しなければならない。
a) 製品要求事項への適合に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量を明確にする。
b) 該当する場合には(必要な力量が不足している場合には)、その必要な力量に到達することができるように教育・訓練を行うか、又は他の処置をとる。
c) 教育・訓練又は他の処置の有効性を評価する。
d) 組織の要員が、自らの活動のもつ意味及び重要性を認識し、品質目標の達成に向けて自らがどのように貢献できるかを認識することを確実にする。
e) 教育、訓練、技能及び経験について該当する記録を維持する(4.2.4参照)。」
すなはち、力量が不足している、不慣れな機器を操作する要員には、事前に、操作に関する訓練を施し、その結果を評価することが求められている。本事例のように、形ばかりの訓練はするが、責任をもって訓練の結果の有効性の評価を実施しないで問題を起こしている事例を数多く見出すことができる。現場の責任者が評価をしっかりやる仕組みと文化が、その組織に根付いていることが重要なことである。
「郵便局職員に危機感感じられず」
上記d)で組織の要員が自分の活動及び貢献についての認識を確実にもつよう要請されている。このことに責任をもつのは要員の責任ではなく組織の責任である。日頃からの認識の教育が問われる。繰り返しの教育によって企業文化にまで昇華させるほどの熱意が組織に求められている。
「原口総務相が準備不足を指摘」
ISO9000から発展した品質にことのほか厳しい、航空宇宙防衛規格9100では、まさしく本件にぴったりの、「作業移管の管理」に関する要求事項を7.1.4節に以下のように規定している。
「組織は、一時的又は恒久的な作業移管(例えば、組織のある施設から他の施設へ、組織から供給者へ、ある供給者から他の供給者へ)を計画し、管理し、かつ、要求事項に対する作業の適合性を検証するためのプロセスを確立し、実施し、維持しなければならない」。
昨年10月の移管の計画が、認可されずに本年7月に遅れた経緯からも計画自体は当然のこととして存在していたと思われる。重要なのは、要求事項の後半である。計画を管理し、かつ、要求事項に対する作業の適合性を検証するためのプロセスを確立していたかである。結果から見ると、この検証活動が十分ではなかったと思われる。生命に係わる航空宇宙防衛産業では長い経験からこのような要求が変更管理の一環として、検証及び顧客への通知又は承認取得などの活動が、この規定以前にも、業界の常識として定着している。
「遅配の全容が把握できない」
新しく構築した集配プロセスはその有効性を監視・測定することをISO9001の8.2.3 プロセスの監視及び測定 節の「プロセスの監視及び測定」で下記のように要求している。
「組織は、品質マネジメントシステムのプロセスの監視、及び適用可能な場合に行う測定には、適切な方法を適用しなければならない。これらの方法は、プロセスが計画どおりの結果を達成する能力があることを実証するものでなければならない。計画どおりの結果が達成できない場合には、適切に、修正及び是正処置をとらなければならない。」
ニュースの経緯を見る限りでは、このプロセスの監視・測定が計画されていた形跡は見出すことができない。ISOのこの要求事項の活用が期待される。
「総務省が実態を調査、処分も検討」
実態調査は必要なことであるが、最初から処分を前提に調査をするのは事実が隠蔽される可能性が高くなり、真の原因が明らかにならないことは、世界の航空業界の事故調査で明らかである。当事者の免責(主として直接の作業員に対して)すら約束して調査をすることが行われている。JAL123の事故調査では、ボーイングの修理作業が原因であることは、この考えが有効に作用して明らかになった。米国と日本では法の考え方、体系の違いなどあるが、真の原因が隠ぺいされない仕組みを考慮して調査に当たることが肝要である。責任者の処分によって再発を防止することと、真の原因を得て再発防止を図ることの両方が必要であるが、真の原因の調査に当事者を協力させる仕組みも必要である。▼